大判例

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横浜地方裁判所 昭和36年(タ)61号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕婚姻関係が判示のように夫妻間に一女あるにかかわらずすでに一五年余の長期間に亘つてその実体を失つておりただ法律上形式的に存在するのみにすぎず、他方原告である夫と訴外人女との間にほぼ同期間の実質的夫婦生活が営まれておりその間に一男二女を儲けているときは、もはや原被告間に婚姻を継続し難い重大な事由があるものとせざるをえない。

〔判決理由〕「原告主張の請求の原因中、原告が被告と婚姻する前から被告の性格を好ましくなく思つていたとの点および被告が、原告を遺棄したことが悪意を以てしたものであるとの点についての事実をのぞく、その余の事実。」を窺知しうるのほか「原告が被告の実家たる真善寺に下宿して被告の実弟(現在は同寺の住職)の家庭教師をしていた後一旦他の下宿に転居してひきつづき右家庭教師をつづけていた節たまたま東京の実父の許に赴きそこから新潟に戻つた折原告の実家から夕食の招待を受けてこれを受けその招宴に臨んだがその席で被告の家庭的雰囲気にほだされて酔余被告と結婚したいと初めてもらしたところ、その翌日被告の母から改めてその真意を問われ正式に被告との結婚の申込をしその後はバタバタと話が進み挙式、法律上の婚姻、同棲に至つた。」事実、「原告と被告とは昭和二四年二月初旬以後現在に至るまで一五年余の長きに亘り完全な別居状態にあり両者間の長女道子は終始被告の許又は同女の実家に生育し昭和二三年八、九月(当時二年余)以降今日に至るまで約一六年間父たる原告と共に生活したことも会つたこともなく原告から仕送りをうけたこともない。」事実および「原告は、被告との完全別居生活がはじまつた直後から訴外鈴木みさをと同棲生活に入り現在に至つているが、両者の間には明子(昭和二五年八月一五日生)、知孝(昭和二七年七月一七日生)および光代(昭和二九年六月二三日生)の一男二女が出生し終始父母たる原告およびみさおに養育されて同人等と共に生活してきている。」事実、をそれぞれ認めることができ、<中略>他に右認定を妨げる証拠はない。

しかして、「被告が原告を悪意を以て遺棄した。」旨の原告の主張事実は、本件にあらわれた全立証を仔細に検討するも、未だこれを確認することができない。

二 しかしながら、以上認定の事実に徴すれば、原被告間の婚姻は両者間に一女あるにかかわらずすでに一五年余の長期間に亘つてその実体を失つておりただ法律上形式的に存在するのみにすぎず、他方、原告と訴外鈴木みさをとの間にはほぼ同期間の実質的夫婦生活が営まれておりその間に一男二女を儲けているのであるから、かかる状態はもはや原、被告間において婚姻を継続し難い重大な理由があるものとせざるをえないのであつて民法第七百七十条第一項第五号に定める裁判上の離婚原因に該当する。

されば、原被告間の離婚を求める原告の本件請求は結局これを認容せざるをえない。

三 そこで、進んで原、被告間の長女道子(昭和二一年九月一五日生)の親権者指定の点について案ずるに、原告が道子の父として自己を親権者と指定きれることを望むことは親としての責任上当然のことであるが、しかし翻つて同女は二才の時から今日まで約一六年の長期に亘つて父たる原告と生活を共にすることもなく原告から仕送りを受けたこともないことその他前判示の事実等本件にあらわれた諸般の事情を参酌し専ら道子の将来の幸福を考えれば、これまで同女を自から又はその実家で撫育してきた被告をして親権者たらしめることが妥当であると考えられるから、民法第八百十九条第二項に則り、原、被告間の長女道子の親権者を被告と定める。

しかして、右判断に当つては、原告が道子の父親としてその愛情と責任上、訴外鈴木みさをの諒解の不に、道子が短大を卒業するまでの学費および生活費ならびに同女が結婚し幸福な家庭生活に入るまでのおよび入るにについての経済的負担の責に任ずる旨の誓約をも考慮に入れたものであるから、原告は右誓約を固く守つて実行すべきであることは多言を要しない。(若尾元)

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